アニサキスアレルギーは日本の国民病? 魚を生食する国に多く

食中毒の原因として近年、トップとなることも多い寄生虫、アニサキス。寄生したサバやイカなどを生で食べて激しい腹痛を起こすことで知られるが、アレルギーを引き起こすことは意外と知られていない。最近は、成人のアナフィラキシー(重篤なアレルギー症状)の原因のうちアニサキスが2割以上を占める可能性があることが分かってきた。

【イラストでみる】アニサキス症とアニサキスアレルギーの違いは

アニサキスによる食中毒(アニサキス症)は、刺し身など魚介類を生で食べ、寄生していた生きたアニサキスが体内に侵入することで起こる。 一方、アレルギーは生きたアニサキスだけでなく、死んだアニサキスや分泌物、卵など、アニサキス由来のタンパク質が原因(アレルゲン)となり、これらに汚染された食品を食べたり触れたりしたときに、じんましんや腹痛、アナフィラキシーなどの症状が出る。そのため、魚介類を十分加熱か冷凍してアニサキスを死滅させても、食中毒は防げるが、アレルギーの予防にはならない。

■スナック菓子も避け スポーツ紙の海釣り担当記者、速水裕樹さん(61)は2年前、アニサキスアレルギーと診断された。 自分で調理したシメサバなどを食べた3時間後に顔がはれ、湿疹や嘔吐(おうと)の症状が出た。受診した救急病院の診断は「ヒスタミン中毒」だったが、1週間後に花粉症で受診した診療所でアニサキスアレルギーの可能性を指摘され専門医を受診、血液検査で判明した。 どのようにすればアレルギーの再発を防げるのか。それには他の食物アレルギーと同じように、原因となる食物を避けるしかない。 アニサキスアレルギーの場合、加熱・非加熱にかかわらずアニサキスのアレルゲンに汚染されている可能性がある海産物全般が対象となる。アレルギー反応の重篤さによって除去の度合いは異なるが、速水さんの場合は海産物全般を避けるように指導された。 このため、カツオ節で取っただしやのりをはじめ、アレルゲンに触れていないと確認できないことから、外食や、コンビニ店のおにぎり、スナック菓子も「ほぼNG」なのだという。

■患者は100万人規模 魚介類を食べたあと、腹痛などの症状が出た場合、これまではヒスタミン中毒や魚肉アレルギーが疑われることが多かった。 しかし、「実際はアニサキスアレルギーの人がかなりいるのではないか」と推測するのは、昭和大学医学部内科学講座呼吸器・アレルギー内科学部門の鈴木慎太郎准教授だ。 同大学の病院にアナフィラキシーで救急搬送された患者を調べたところ、約23%がアニサキスアレルギーだった。全国的な調査はないが、他の施設でも同様の割合で患者がいると仮定すれば、日本の患者は100万~150万人にのぼる可能性がある、と鈴木准教授は推測する。

■早期診断が大事 これまでに500人超を診療した鈴木准教授は、アニサキスアレルギーについて、中高年で発症しやすい(最近は若年者も増加傾向)▽明らかな男女差なし▽原因食品の摂取から発症まで数時間~半日程度▽原因物質(アレルゲンを含む魚介類など)に触れたり、摂取する頻度が高い「すし職人」や「マリンスポーツ愛好者」は難治化リスクが高い傾向がある-と語る。日本と同様に魚を生食するスペインや韓国でも発症例が多い。 鈴木准教授は「刺し身やすしなどを好んで食べる日本だからこそ、〝国民病〟の一つとしてアニサキスアレルギーはもっと注目されるべき」とし、「魚介類を食べて12時間以内にじんましんや腹痛、息苦しい、だるいなどの症状があったらアニサキスアレルギーかもしれない。重症化を防ぐためにも、早期診断のため一度アレルギー専門医を受診してほしい」と話している。(産経新聞引用)

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